学校法人タイケン学園

日本ウェルネススポーツ大学 スポーツメディア論研究室
日本ウェルネススポーツ専門学校 スポーツマネジメントゼミ

新着情報||学校法人タイケン学園 日本ウェルネススポーツ専門学校

2015.03.30

柴岡信一郎講師 芸術メディア研究会展で作品発表

柴岡信一郎講師が芸術メディア研究会展「Tokyo Crossing 2015」で作品発表を行いました。

芸術メディア研究会展「Tokyo Crossing 2015」
場所:中野ZERО西館美術ギャラリー(東京都中野区中野2-9-7、中野駅南口徒歩8分)
種目:映像、写真、造形、パフォーマンスなど
日程:3月28日(土)12:00~21:45、29日(日)12:00~19:30
入場料:無料


中野ZERО西館美術ギャラリー


柴岡信一郎「近代産業遺産の光と影 栃木県足尾銅山」

1.はじめに
 本作品は栃木県にあった足尾銅山の現在の様子を記録したものです。足尾銅山は日本一の銅産出量を誇った銅山であり、近代産業の発展に大きく貢献しました。一方、銅山による煙害で山は荒廃し緑を失い、川は汚染された過去があります。銅山があった足尾町(現日光市)は、町全体が日本の産業史の縮図ともいえる近代遺産となっています。大正時代に産銅量のピークを迎え、38000名に達した人口は、閉町した平成18年には3200名になりました。現在、足尾の街は過疎化が進む山深い地区ですが、かつては長屋、浴場、学校、病院が立ち並び、人々がひしめき合う生活空間が存在しました。それは現在でも、建造物跡や観光施設、山々の風景、治山事業等によって偲ばれます。これら「ここに何かが有った」という場所は、長い歴史での栄枯盛衰を示す独特の雰囲気を放っています。

2.写真撮影の経緯
 1998年、撮影で奥日光を訪れた際、ふとしたことから隣町の足尾に立ち寄ったのがきっかけで撮影を開始し、撮影は2011年まで続きました。その魅力は、現在では過疎化が進む山深い街が、1世紀前には巨大な産業都市であったという事実と、それが醸し出す雰囲気です。栄華を誇った当時の建造物は現在も現役のものも有りますが、多くは所有者によって取り壊され、当時の街並みは消滅しつつあります。著者が撮影を続ける中で、タッチの差で取り壊し前に撮影した物も多数あります。今撮影しなければ、この風景は二度と見られなくなる、という思いが撮影意欲を駆り立てました。

3.試行錯誤
 現在、足尾では煙害で草木が生えなくなったハゲ山への植樹活動や鉱山施設での観光事業が行われています。日本の近代化に貢献した「光と影」の遺産を利用して、町全体をエコミュージアムとする構想があります。ここで矛盾が起こります。負の遺産であるハゲ山が、植樹活動により緑生い茂る山になると「遺産」ではなくなってしまうのです。負の遺産を残すことで天然のミュージアムとなります。未来への警鐘として、残すべき所は残す必要があるのでしょうか。

4.未来への推進力に
 2011年、東日本大震災によってエネルギー政策が抜本的に見直されることとなりました。足尾も銅生産により19~20世紀の日本のエネルギー政策を支えた一方で、日本初の公害を引き起こしました。足尾は我が国を牽引したという誇りを持ち、「過去」を活用して「未来」への推進力に繋げることが出来るはずです。近代産業遺産の「光と影」の映像記録が、人間と自然の調和に役立つことを願っています。